「千円だけでも払ってください」と自宅訪問された方へ

借金の多くは,返済日又は最後の支払いをした日の翌日から5年間で消滅時効にかかり借金を支払う必要はなくなります。

ただ,5年間経過すれば自動的に借金が消滅するわけではなく,消滅時効の援用を行う必要があります。

もうひとつ,消滅時効により借金から解放されるためにポイントとなるのが,改正民法での時効更新事由(改正前:時効中断事由)がないことです。消滅時効期間完成の前後を問わず,この更新事由があると消滅時効を援用して借金から解放されることができません。更新事由として最もシンプルなものが債務者により債務の承認です。

 

今回ご紹介するのが,この更新事由(中断事由)の事例です。

貸金業者の従業員が突然「千円だけでも払ってくれないか」と自宅を訪問してきたことはありませんか。これに対して「千円ならいいか」と払ってしまう又は「千円も払えないけど確かに借りている」との行動をとることが債務の承認,時効更新事由に当たります。

時効更新(時効中断)してしまうと,その時点から再度5年などの時効期間が経過しないと消滅時効は完成しません。また,千円払って終わりではなく,残りの元本と,長い間借金をそのままにしておいたために思ってもみない額に膨れ上がっている遅延損害金を全額支払う必要があります。

(7年間放置の例。元本よりも遅延損害金が多くなっています)

 

貸金業者は,借金返還の訴訟を提起して,債務者の債務の承認を主張・立証し,消滅時効は完成しないと主張してきます。

(訴訟での消滅時効援用への対抗例。この主張を裏付ける証拠が出てくると消滅時効の成立は困難となります)

 

言ってしまえばそれが貸金業者の仕事ではあるのですが,自宅に突然訪れて債務の承認をさせて消滅時効援用権を電撃的に奪う手法に対しては,こちらも警戒して臨む必要があります。

このようなことが起こった場合は,すぐに弁護士にご相談ください。消滅時効が完成しているか速やかに調査します。

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